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大阪高等裁判所 昭和55年(ネ)1267号 判決

主文

本件各控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

一  控訴人らは「原判決を取消す。被控訴人の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、

被控訴人は主文同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の主張及び証拠関係は、次に付加、訂正するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決三枚目表五行目の「シズコ」を「シヅコ」と、同一〇行目の「二五」を「二二」と、同四枚目表四行目の「5」を「(5)」と同七枚目表一二行目の「被告」を「被告ら」とそれぞれ訂正する。

同四枚目裏四行目末尾に次のとおり付加する。

「被控訴人は昭和五一年一二月二七日奈良地方裁判所昭和五一年(ヨ)第一八六号不動産仮処分命令を得て、同日控訴人らの占有を解く断行仮処分の執行を了したが、その直前まで控訴人らは右建物全部を占有していた。もつとも、控訴人安男は右仮処分の前の同年一一月一二日夜本件建物に放火を実行(共犯者野田了)し、その当時大和高田市内の吉本病院に入院中であつたが、一時の不在で、家財道具等は本件建物内に存置されていたし、同建物が同控訴人の占有下にあつたことはいうまでもない。

同五枚目裏九行目の次に、次の一項を付加する。

「なお本件和解調書による本件土地建物明渡の強制執行は、前記昭和四七年六月三〇日の執行により終了しており、右和解調書はもはや右明渡の強制執行の債務名義たりえないので、新たな債務名義を求めるものである。」

同末行目の冒頭に「の有効性」を付加し、「同被告」以下同六枚目表三行目までを削除する。

同六枚目表七行目の「点」の次に「、控訴人らの占有奪取の点、本件建物の火災が控訴人安男の放火による点、同控訴人の家財道具存置の点、本件建物占有の点」を付加する。

同一〇枚目裏六行目の「(服部清司)」の次に「、服部安男及び高山シヅコ(以下原告らという)」を付加する。

同八行目の冒頭「四」の次に「第一項の求債債務の内金八四、一七〇、一一二円を担保するため服部安男はその所有の別紙第二物件目録記載(1)の土地を、原告(服部清司)はその所有の同目録記載(2)ないし(4)の土地を、高山シヅコは同目録記載(5)新(イ)の建物をそれぞれ被告(西日本建設業保証株式会社)に信託譲渡し、被告はこれを譲受け、かつ、その引渡を受けたほか、」を付加する。

同一二行目の「原告」の次に「ら」を付加する。

同一一枚目表四行目の「原告の所有」を「被告の所有」と訂正し、同行目末尾の「原告」の次に「ら」を付加する。

同一〇行目の次に、次の一項を付加する。

「九 服部安男、原告、高山シヅコは別紙第二物件目録記載(5)新(ロ)の建物につき、同建物が同目録記載(5)新(イ)の建物の増築部分であり、右(5)新(イ)の建物の附合物であることを確認する。(同第六条)」

同一四枚目表四行目の「参階建」の次に「居宅」を付加する。

2  原判決当事者の主張三、四を次のとおり改める。

「三 控訴人らの、控訴人清司の和解成立についての主張

1  右裁判上の和解については、控訴人清司法定代理人親権者、父控訴人安男及び母服部松枝の両名から訴訟委任された弁護士酒井圭次が控訴人清司の訴訟代理人として和解している。しかし親権者母服部松枝は同弁護士はもとより何人にも右訴訟委任したことはないから、無権代理で、控訴人清司については和解は成立していない。民法八二五条の規定は私法上の取引行為の善意者保護の規定で、訴訟委任のごとき訴訟行為に準ずるものには適用がない。

2  右和解調書中の控訴人清司の担保提供行為は奈良家庭裁判所から選任された高山シヅコにより追認されている。ところで右選任申立については前同様弁護士酒井圭次によりなされている。しかし親権者母服部松枝は同弁護士に選任申立を委任したことはない。また右和解調書に基づく控訴人清司の担保提供行為は同控訴人の父控訴人安男の債務に関するものであるが、右特別代理人高山シヅコは右和解において控訴人安男に対する連帯保証人となつており、高山シヅコが控訴人清司の特別代理人となることはいわゆる利益相反行為となるから、高山シヅコは特別代理人の資格を欠く。また高山シヅコの追認は昭和四六年七月三一日になされているが、和解調書に基づく分割債務のうち、同年五月及び六月末日に支払うべき債務は、追認なきままに期限が経過しているから、右追認時には追認の対象を欠くことになり、これを前提とした代物弁済予約完結の意思表示はその効力を発生するに由なきものである。

四  被控訴人の、控訴人清司の和解成立についての主張

1  控訴人清司の和解については同控訴人の親権者父控訴人安男及び母服部松枝の両名から訴訟委任された訴訟代理人弁護士酒井圭次が和解し、和解調書中の控訴人清司の担保提供行為は特別代理人高山シヅコが追認している。右和解及び特別代理人選任申立は次の理由により有効に成立している。すなわち(イ)本件建物の所有名義人は控訴人清司であるが、実質関係をみれば、建築資金はすべて控訴人安男の出捐になるもので、同控訴人の所有である。控訴人清司は本件建物が建築された昭和四四年五月当時は未だ一〇歳にも満たない子供で、他方、控訴人安男は右建築中の本件建物について同月一五日付で新築工事完成次第被控訴人のため第一順位の抵当権を設定することを誓約している。(ロ)控訴人安男と松枝とは遅くとも昭和三三年ごろから完全に別居し、同控訴人は奈良市法蓮町に別宅を構え妾の高山シヅコと同棲生活を送るうち控訴人清司が出生し同控訴人は出生以来一貫して控訴人安男とシヅコの膝下で養育され、松枝は控訴人清司と日常生活を共にしたことはほとんどなく、加えて、松枝自身病弱で寝たり起きたりの生活をしていたこと及び控訴人安男らが控訴人清司の様子を松枝には知らせないよう配慮していたことなどから、松枝は同控訴人の成長について一切関与していなかつた。また、服部尋史は控訴人安男及び松枝の長男として同控訴人の指示に従つていたものである。そして、以上の事情の下においては、

(一)  控訴人安男又は服部尋史は松枝の包括的代理権を有していた。

(二)  乙第一、第二号証の各二、同第三号証のとおり控訴人安男が共同の名義で弁護士に委任しており、被控訴人は、松枝の委任がないことを知らなかつたから、民法八二五条により有効である。

(三)  松枝は本件和解の時点で控訴人清司に対して親権を行うことができない状態にあつたため、民法八一八条三項但し書により、控訴人安男の訴訟委任だけで十分であつた。

2  控訴人らの控訴人清司の和解成立についての主張は権利の濫用であつて許されない。すなわち、前述のように、本件建物の実質上の所有者は控訴人安男である。また本件和解は昭和四五年一二月二二日に成立したが、控訴人ら服部側はこれを履行せず、被控訴人が強制執行に着手しようとするやその猶予を求めたので、被控訴人はこれに応じ、同四六年七月三一日に明渡の猶予等を中心とする私法上の和解(本件示談契約)が成立した。しかるに、控訴人ら服部側はその後も和解の履行をしなかつたため、被控訴人は同四七年九月二五日やむなく訴訟を提起したが、この間控訴人ら服部側からは今回のような主張は一切なされなかつた。ところが、同四八年一月二四日初めて今回のような主張をなすに至つたもので、右主張はそれ自体きわめて不自然で、かつ、常識あるものの納得できない点がある。右主張は、控訴人ら服部側の従来の執行妨害工作を考え併せると、控訴人ら服部側の一連の妨害工作の一環であることが明白である。なお、右主張は、本訴と当事者を共通とする奈良地方裁判所昭和四七年(ワ)第二二四号、同四八年(ワ)第一二号所有権移転登記抹消登記等、同五一年(ワ)第二三八号所有権移転登記手続承諾請求併合事件の第一、二審判決において排斥されている。」

3  証拠関係(省略)

理由

一  控訴人清司についての成立の有効性の点を除き、被控訴人主張の裁判上の和解が成立したことは当事者間に争いない。そして成立に争いない甲第二号証によると、本件和解調書は、控訴人清司と被控訴人間においては、被控訴人より訴訟委任を受けた弁護士〓本公一と控訴人清司の親権者父控訴人安男及び同母服部松枝(以下、松枝ともいう。)の両名より訴訟委任を受けた弁護士酒井圭次が各訴訟代理人として出頭し成立した旨記載されていることが認められる。また、成立に争いない甲第一号証、乙第一、第二号証の各二及び原審における控訴人安男本人尋問の結果によると、控訴人安男の酒井弁護士に対する委任状は同控訴人において自署したものであることが認められ、成立に争いない甲第一五号証、乙第五号証によるも未だ右認定を動かすに足りない。

更に、前記甲第一号証、第一五号証(一部)、成立に争いない甲第一三号証の一、第一七、第一八号証、乙第五号証(一部)、第六ないし第八号証、原審における控訴人安男本人尋問の結果によつて同控訴人作成部分の成立が認められる乙第一、第二号証の各一(服部松枝作成部分についてはその記載)、原審における控訴人安男本人尋問の結果(一部)に弁論の全趣旨を総合すると、被控訴人の控訴人清司の和解成立についての主張四の1の(イ)、(ロ)の事実、服部興業株式会社(以下、服部興業ともいう。)は控訴人安男が成立し同控訴人の支配する会社(昭和四二年四月までは代表者、その後は同控訴人、松枝間の長男尋史が代表者)であつたが、同控訴人ら家族は服部興業の経営、資金の融通等仕事のやり繰りについても松枝の耳に入れないよう常々配慮しており、同女もこれを了解し、殊更異議を申出るようなこともなかつた事実、同女の親権者母としての酒井弁護士に対する委任状は控訴人安男の指示の従い同控訴人と、松枝間の長男尋史(服部興業の当時の代表者)において代署した事実が認められ、右認定に反する甲第一五号証、乙第五号証、原審における控訴人安男本人尋問の結果の各部分は採用できず、他に反証はない。

右事実によると、松枝は、控訴人安男に対し、松枝の控訴人清司の財産関係に対する親権の行使につき、包括的に代理権を与えていたものと解するのが相当であり、控訴人安男の右代理権に基づき松枝の酒井弁護士に対する委任状が作成されたものというべきである。(なお松枝が当時控訴人清司の親権者であることは当事者間に争いないものとして訴訟が進行しているが、前記甲第一五号証(服部尋史の証人調書)乙第七号証(高山シヅコの証人調書)及び記録中の戸籍謄本によると、控訴人清司は控訴人安男と高山シヅコとの間に出生した子であり、戸籍上は控訴人安男と松枝との間に出生した二男として届出でられており、したがつて松枝が親権者でない疑いがあり、このことも前記松枝が控訴人安男にその親権の行使につき包括的に代理権を与えていた理由の一つと認められる。)そうすると酒井弁護士は控訴人安男及び松枝より授与された訴訟代理権に基づき控訴人清司のため裁判上の和解をなし、本件和解調書は成立したものである。

二  前記和解における控訴人清司の担保提供行為については、右和解において控訴人安男も連帯保証人となつていることから、利益相反行為として控訴人安男の特別代理人によることとされていたことが前記甲第二号証によつて認められる。そして奈良家庭裁判所によつて選任された特別代理人高山シヅコが右担保提供行為を追認したことは当事者間に争いない。

前記認定事実のほか、前記甲第一号証、第一五号証(一部)、乙第五号証(一部)、原審における控訴人安男本人尋問の結果により同控訴人作成部分の成立が認められる乙第三号証(服部松枝作成部分についてはその記載)、原審における控訴人安男本人尋問の結果(一部)によると、右特別代理人選任の申立については、控訴人安男及び松枝の委任を受けたとする酒井弁護士によつてなされているが、同弁護士への委任状のうち控訴人安男分は同控訴人において自署押印し、松枝分は尋史において前同様控訴人安男の指示に従い同控訴人の有する包括的代理権に基づき代署し松枝の認印を押捺したものであることが認められ、右認定に反する甲第一五号証、乙第五号証、原審における控訴人安男本人尋問の結果の各部分は採用できず、他に反証はない。右事実によると、酒井弁護士は控訴人安男及び松枝より授与された訴訟代理権に基づき適法に特別代理人選任申立をなしたというべきである。のみならず右特別代理人選任の申立は利害関係人(したがつて親権者のいずれかひとりも含まれる。)でもなしうると解されるので、右選任の申立ては有効である。

そして前記甲第二号証によると、高山シヅコは控訴人安男と同様前記和解で服部興業の債務につき、担保を提供し、連帯保証人となつていることが認められ(控訴人ら主張の高山シヅコが控訴人安男の債務の連帯保証人となつていることは認められない。)、控訴人清司との間に控訴人安男が利益相反行為があれば、高山シヅコにも利益相反行為があるものと考えられる。しかし、家庭裁判所が特別代理人を選任するには代理権を授与される事項の意義と本人及び特別代理人との関係等諸般の事情(前記認定事実のほか、前記甲第一五号証乙第五、第七号証、成立に争いない甲第一三号証の一、原審における控訴人安男本人尋問の結果によると、服部興業は控訴人安男が設立し同控訴人の支配する会社であること、控訴人清司は控訴人安男と高山シヅコとの間に出生した子である疑いがあること、右和解において高山シヅコ、控訴人清司が提供した担保物件も控訴人安男が高山シヅコ、控訴人清司ら名義にしたもので、控訴人安男が支配力を有する物件であることが認められる。)を考慮して裁判するものであつて、前記事情があるからといつて、家庭裁判所が特に代理権を授与した高山シヅコ選任の審判の効力が左右されるわけのものではない。更に控訴人らは、高山シヅコの追認がなされた昭和四六年七月三一日当時、本件和解調書に基づく分割債務のうち同年五月及び六月末日に支払うべき義務については既に期限が経過しているから、右追認はその対象を欠き効力を生じないと主張するが、高山シヅコのなした追認が昭和四六年七月三一日であるがゆえに、同年五月及び六月末日を弁済期とする支払義務を定めた原判決別紙和解条項二項に対する追認が効力を生じない理由はなく、右追認の効力は行為の時に遡つて有効となつたと解される(民法一一六条参照)ので、右主張も理由がない。

したがつて控訴人清司の本件担保提供行為は有効である。

三  前記甲第二号証、成立に争いない甲第三号証、原審証人松原慶昌の証言によると、被控訴人主張のとおり服部興業は分割債務の支払を怠つて期限の利益を喪失し、被控訴人が昭和四六年七月一五日到達の内容証明郵便で譲渡担保物件につき代物弁済による取得の通知をし、代物弁済予約物件につき予約完結の意思表示をし、本件土地建物の所有権を取得したことが認められ(右内容証明郵便による意思表示のあつたことは争いない)、反証はない。また、成立に争いない甲第四号証、前記証人の証言によると、被控訴人主張の請求原因3の事実が認められる。

そして被控訴人主張の請求原因4の事実は執行完了の点、控訴人らの占有奪還の点、本件建物の火災が控訴人安男の放火による点、同控訴人の家財道具存置、本件建物占有の点を除き当事者間に争いなく、右事実と、前記甲第二号証、第四号証、第一三号証の一、成立に争いない甲第五ないし第七号証、第一二号証、第一三号証の二、乙第七号証、原審証人松原慶昌の証言、原審における控訴人安男本人尋問の結果によると、次の事実が認められる。

控訴人ら及び高山シヅコは本件土地建物に居住してこれを占有していたところ、被控訴人主張のとおり昭和四七年六月三〇日本件建物部分を除く部分につき執行が完了し、被控訴人は右執行完了部分につき警備保障会社に依頼してその管理をしてきた。ところが、控訴人らは昭和四八年七月一日以降右管理人を排除し右執行完了部分に対する被控訴人の占有を奪還し、再び本件土地建物全部を占有するようになつた。その後、控訴人安男は大和高田市の吉本病院に入院したものの、家財道具等は右建物内に存置していたところ、同五一年一一月一二日夜本件建物は火災に遭つたので、その直後の同年一二月二七日原判決別紙第二物件目録(5)新(ロ)の建物を除く本件土地建物に対し被控訴人主張の断行仮処分命令に基づく執行がなされたが、当時も控訴人らの家財道具等が沢山存置されていた。なお、本件建物部分については、控訴人安男が吉川金一の所有、占有にかかるものと主張したため右部分の執行は不能となつたものであるが、その後吉川金一より右所有、占有を理由とする第三者異議の訴(奈良地方裁判所昭和四七年(ワ)第二二三号)が提起され、昭和五四年八月一〇日吉川金一訴訟承継人(訴訟中に吉川金一死亡)敗訴の判決があり、右は同月二三日控訴取下により確定した。

右事実によると、控訴人らは昭和四八年七月一日以降現在まで本件土地建物を占有しているというべきである。そして前記甲第四号証によると、服部興業は本件土地建物明渡猶予期間中の損害金を一か月二〇万五二二二円と約していることが認められるので、右金額が賃料相当損害金と認められる。

そうすると、控訴人らは被控訴人に対し本件土地建物を明渡し、かつ、連帯して昭和四八年七月一日から右明渡済みに至るまで一か月金二〇万五二二二円の割合による賃料相当の損害金を支払うべき義務がある。

四  原判決別紙第二物件目録記載(5)の新(ロ)の建物につき被控訴人主張のとおり控訴人清司のため所有権保存登記がなされたことは当事者間に争いなく、前記争いない本件和解調書の和解条項に本件(5)新(ロ)の建物が(5)新(イ)の建物の増築部分で附合物であると確認されている事実のほか、前記甲第一二号証、第一三号証の一、成立に争いない甲第八、第九号証によると、本件(5)の新(ロ)の建物はもとより高山シヅコ所有名義の(5)旧記載の建物の一部で、若干の増築はあつたが、増築部分と既存部分との間には障壁は全く存在せず、構造上も用途上も独立性を有しないものであること、しかるに、控訴人安男は右建物につき本件(5)新(イ)(ロ)記載の区分建物としての登記を作り出したことが認められる。そうすると控訴人清司の所有権保存登記は無効の登記であるから、これを抹消すべき義務があるものといわなければならない。

五  前認定事実と原審証人松原慶昌の証言によると、本件和解調書による本件土地建物明渡の強制執行は、うち本件建物部分を除く部分については昭和四七年六月三〇日の執行により終了したが、本件建物部分については吉川金一が占有しているということで執行できなかつたこと、本件建物部分は建物の一部で独立性がないこと、控訴人らはその後執行終了した本件建物部分についても昭和四八年七月一日以降被控訴人管理人の占有を排除し、控訴人らは現在本件土地建物を占有していることが認められるので、被控訴人は控訴人らに対し本件土地建物明渡について新たな債務名義を求める訴の利益を有するものと解するのが相当である。

六  以上によれば、被控訴人の控訴人らに対する本訴請求はいずれも理由があり正当として認容すべきであるから、これと同旨の原判決に対する本件各控訴を棄却し、民訴法九五条、八九条、九三条を適用のうえ、主文のとおり判決する。

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